お待たせしました。非常に多忙でしたので少し予定より遅れてしまいましたが、Vol.2行きます。その前に二つほどお断りしておかなくてはならないことがあります。このシリーズは一切脚色無しの実体験をお話するものですが、登場人物の名前はプライバシー保護のため仮名にしてあります。また、日時、検査結果などの詳しいデータについては、きちんと日報などを記録していたわけではなく、記憶を頼りにして書いている関係上、やむを得ず多少正確さに欠ける点がありますことを予めご了承願います。

そうして毎日2回の酵素風呂通いが始まったわけですが、さほど面倒というこもなく、むしろ何かにチャレンジするという感覚で、間もなく日課として私の生活の一部になりました。朝9時に藤枝の家を出て国道一号線バイパスを静岡へ向かい、「その場所」には10時15分前に到着します。オーナーの杉山さんが開店時間ぎりぎりに到着して鍵を開けるのを待って、あとに続いて薄暗い店に入ります。私はいつも最初のお客でした。2月末ということもあって朝はまだ寒く、穴を掘った桶からはもうもうと湯気が立ち上っています。ぬかに掘られた穴に仰向けに寝て、大事なところをぬかをかけて覆うのですが、これがなかなか大変なのです。感度良好な部分だけにぬかの熱さがビリビリきてたまらんので思わず「アッチー!」と叫んでしまいます。なんとか覆い隠してから「お願いしまーす」と言うと、杉山さん、待ってましたとばかり、その熱いぬかを無造作に私の全身にばさんばさんとかけてくれます。最初の10分くらいはよいのですが、最後の5分は、あと何秒というようにカウントダウンしながら必死に熱さを耐えしのびます。シャワーを浴び、待合室に戻るとぐったりです。全身に赤いまだら模様が浮かび上がって、火傷一歩手前みたいな感じ。3−4時間もすると元の状態に戻り安心します。私が出る頃には他のお客さんたちも次々に来店し、待合室ではいろいろな話が飛び交うようになります。「私がんなんです。」「いやあ、実は僕もがんでね。」などと開けっぴろげな話となります。皆がうつむいて押し黙っている病院の待合室とはかなり雰囲気が異なります。11時頃には店を出て、家に戻り、1時間ほど昼寝をして、昼食をとり、そのあと3時間ほど自宅の事務所で仕事をして(SOHOでしたので)4時過ぎにまた静岡に向かうのです。夕刻には時折、例の大御所のおじいさんが店にきています。杉山さんが「先生」と呼ぶその大御所は、先生というよりはむしろやくざの親分といった感じの鋭い目つきをしていましたが、笑うとまるで子供のように可愛い。名刺には「日本酵素医学研究所」と何やら怪しげな名称が。自称元検事を名乗るその爺さんの話術の得意なことといったら天下一品で、ご自身の検事としての体験や、酵素風呂に関わるようになったきっかけなど興味深い話が延々と続くのです。次回はそんな話の中から酵素風呂に関連したいくつかのエピソードを拾ってみたいと思います。