酵素風呂には大きく分けて2種類あるのをご存知でしょうか?
今回はその違いについて簡単に説明したいと思います。その2種類とは、おがくず酵素風呂と米ぬか酵素風呂です。その違いは床材(寝床、つまり、桶の中身の材料)にあります。その名の通り、おがくず酵素風呂では床材におがくず(檜などの木材を製材する際に生じる切粉)を用いるのに対し、米ぬか酵素風呂では脱脂米ぬか(お米を精米する際に生じる生ぬかから米油を抽出した残りの固形分)を用います。また、両方のイイトコ取りを目論でおがくずと米ぬかをミックスして用いる中間的な酵素風呂もあるようです。
一見すると、この2種類の酵素風呂は、床材が異なるだけで、同じもののように見えますので、両方共「酵素風呂」として一括りで扱われていますし、おがくず酵素風呂の方が全国的にみて普及率が高いために、酵素風呂というと一般におがくず酵素風呂のイメージの方が強いのではないかと想像されます。ところが、実際には、この床材の違いというのが、この両者は似て非なるもの、ほとんど別物と言って差し支えないほどの決定的な違いを生んでいるのです。その違いについて説明します。
おがくずというのは木材の粉末ですから、その成分は単なるセルロースです。白蟻などのセルロースを分解して栄養分にする生物は別として、そこには生物にとって有用な成分はほとんどありませんし、それ自体には酵素は含まれていませんし、酵素を産みだすバクテリアを養うこともできません。したがって、そこで発酵熱を産みだすには外部から触媒としての酵素を加える必要があります。そのような酵素は主に果物など植物から抽出した液状のものを用います。
一方、米ぬかは、お米のもっとも栄養分の高い部分で、ビタミンやミネラルといった栄養素の宝庫です。米ぬか酵素浴で使用する脱脂ぬかは脱脂の過程でビタミンEなどの脂溶性の成分はかなりの部分が失われているとは言え、それでもその主成分としてのタンパク質や様々のミネラルやビタミンなどの多くが残っています。そのため昔から飼料や肥料として利用されてきました。タンパク質とそのほかの栄養素は当然ながら微生物の餌にもなります。ですので、米ぬかを用いて多種類の微生物を培養することができます。また脱脂ぬかを用いることによって、保存性がよく、油成分の酸化による劣化と腐敗を防ぐこともできます。
発酵によって酵素は消耗しますので、発酵を維持するために、おがくす酵素風呂では植物由来の酵素を定期的に加える必要があります。それに対して米ぬか酵素風呂では、桶全体がいわばバクテリア培養槽となっていて、彼らにとって好ましい環境が維持されるかぎり、永久的に分裂増殖を繰り返して微生物としての種の命が続いていきます。そしてそのバクテリアたちが自らの体内(細胞内)で酵素を合成しますから、寿命で死んだものからは細胞内の酵素が外部(桶の中)に漏れ出しますし、かれらの代謝物(排泄物)には酵素が混じっていますので、桶の中身は、未消化の脱脂ぬかとバクテリアと酵素で充満していることになります。
以上のような床材の違いと、それによる発酵メカニズムの違いは、以下に述べるような結果をもたらします。
1.酵素の量の違い: おがくず酵素風呂では、外部から酵素を加え、加えた酵素は時間の経過とともに消耗減少するのに対し、米ぬか酵素風呂では、そこで常時分裂増殖して莫大な量になった微生物が酵素を産生しているので、桶内部の酵素の量が圧倒的に多い。つまり、体表から吸収できる酵素の量も多いと想像されます。
2.発酵の度合いの違い: 酵素の量が多いため、桶内部の熱の上がり方が違います。
より高い温度まで発酵熱が上昇し、その温度が長時間維持されます。
3.栄養素の違い: 米ぬか酵素風呂では、酵素だけでなく、米ぬかに含まれるそれ以外の有用成分も摂取することができる。
4.清潔さの違い: 米ぬか酵素風呂では浄化槽の原理と同様に、桶の中の微生物が人体からはがれ落ちる垢、角質、体毛などを分解処理しますから、米ぬか酵素風呂の桶の中は常に清浄に維持されます。また、人体に無害な好気性有用菌が支配的になっていて、他の有害嫌気性菌の繁殖は抑制されますので、たとえ何らかの有害菌が混入したとしても、増殖繁茂することができません。これに対し、おがくず酵素風呂では、微生物がほとんど存在しませんから、混入した異物は処理されず、次第に汚れてきますし、その異物を餌として嫌気性菌がはびこる可能性もありますから、床材は定期的に交換する必要があります。(このブログの論文カテゴリーにある「2種類の生物」を参照ください)
5.メンテナンスの違い: 酵素を加えて攪拌するだけのおがくず酵素風呂と違い、米ぬか酵素風呂ではバクテリア(微生物)を培養していますから、かれらが元気で生活できるような環境の保全に神経を使わねばなりません。ですのでメンテンスはむしろ困難になり、ある程度の熟練が必要になります。
米ぬか酵素風呂では酵素を加える必要も、床材を交換する必要もありませんが、微生物を養うために、餌(米ぬか=タンパク質)と水と空気(酸素)を常に十分与えなければなりません。中でも、我々人間をはじめあらゆる好気性の生物にとって、もっとも大切なエネルギー源は酸素です。私たちは断食して何日も食べなくても生きていられます。体内に脂肪を蓄えていますから、いざという時は(野生動物の場合は何日も餌にありつけないことがよくあります)その脂肪を使うことができます。それより重要なのが水で、水がないと、そう長くはいきられません。そして、最も大切なのは空気です。ご存知のとおり、酸素が少し不足しただけで脳が働かなくなり、その結果全身が麻痺してすぐに死に至ります。この点は私たちのご先祖様である好気性のバクテリアも全く同様で、餌の米ぬかと水が十分でも、酸素が少し不足しただけですぐダウンしてしまいますから、注意が肝心です。酸素が欠乏すると、好気性菌は勢力が縮小すると同時に嫌気性菌が勢力範囲を拡大しますので、発酵の代わりに腐敗が起こるようになり、にがいような酸っぱいような独特の腐敗臭が発生するようになり、当然ながら発酵熱も発生しなくなり、酵素風呂として使えなくなるのです。
酸素が欠乏する原因はいくつかありますが、中でも重要と言えるのが、水分量です。
水分が多過ぎると、固まりやすく、空気が混ざりにくくなります。水分が多いと、体感温度は上昇しますので、床材の温度を上げたい時はどうしても水を多めにする傾向になりがちですが、混入空気は減少しますから、熱の維持は実際には困難になります。ただし逆に水不足になり、床材が乾燥し過ぎると微生物の活性は下がりますから、熱も下がります。
このあたりのバランスはかなり微妙ですから、日常的に餌の脱脂ぬかの量、天候、気温、湿度、換気の具合などを考慮しながら加える水の量を微調整しなければなりません。これらのバランスが適切で、発酵がうまく行っているときは、香ばしいよい香りがしますし、ぬかはさらさらでふわっとしており、固まりにくく、粒もできません。どちらかというと乾いた状態の方が、体感温度としては低めになり、びりびりとした刺すような熱さは感じにくく、逆にリラックスしてしっかり温まることができますし、何人入っても暖かさが持続します。この辺りの匙加減については、関与する変動ファクターが多く、一律にデータで示すことはほとんど不可能で、メンテナンス担当者の経験と、色、匂い、手ですくった時の感触などの微妙な違いをキャッチできる感性がもっとも重要になります。単細胞である微生物自体は肉眼では観察できませんが、犬や猫などと同様、生き物ですから、何よりも愛情をもって接することが肝要というわけです。
米ぬか酵素グループHP↓
http://www.komenukakoso.jp
今回はその違いについて簡単に説明したいと思います。その2種類とは、おがくず酵素風呂と米ぬか酵素風呂です。その違いは床材(寝床、つまり、桶の中身の材料)にあります。その名の通り、おがくず酵素風呂では床材におがくず(檜などの木材を製材する際に生じる切粉)を用いるのに対し、米ぬか酵素風呂では脱脂米ぬか(お米を精米する際に生じる生ぬかから米油を抽出した残りの固形分)を用います。また、両方のイイトコ取りを目論でおがくずと米ぬかをミックスして用いる中間的な酵素風呂もあるようです。
一見すると、この2種類の酵素風呂は、床材が異なるだけで、同じもののように見えますので、両方共「酵素風呂」として一括りで扱われていますし、おがくず酵素風呂の方が全国的にみて普及率が高いために、酵素風呂というと一般におがくず酵素風呂のイメージの方が強いのではないかと想像されます。ところが、実際には、この床材の違いというのが、この両者は似て非なるもの、ほとんど別物と言って差し支えないほどの決定的な違いを生んでいるのです。その違いについて説明します。
おがくずというのは木材の粉末ですから、その成分は単なるセルロースです。白蟻などのセルロースを分解して栄養分にする生物は別として、そこには生物にとって有用な成分はほとんどありませんし、それ自体には酵素は含まれていませんし、酵素を産みだすバクテリアを養うこともできません。したがって、そこで発酵熱を産みだすには外部から触媒としての酵素を加える必要があります。そのような酵素は主に果物など植物から抽出した液状のものを用います。
一方、米ぬかは、お米のもっとも栄養分の高い部分で、ビタミンやミネラルといった栄養素の宝庫です。米ぬか酵素浴で使用する脱脂ぬかは脱脂の過程でビタミンEなどの脂溶性の成分はかなりの部分が失われているとは言え、それでもその主成分としてのタンパク質や様々のミネラルやビタミンなどの多くが残っています。そのため昔から飼料や肥料として利用されてきました。タンパク質とそのほかの栄養素は当然ながら微生物の餌にもなります。ですので、米ぬかを用いて多種類の微生物を培養することができます。また脱脂ぬかを用いることによって、保存性がよく、油成分の酸化による劣化と腐敗を防ぐこともできます。
発酵によって酵素は消耗しますので、発酵を維持するために、おがくす酵素風呂では植物由来の酵素を定期的に加える必要があります。それに対して米ぬか酵素風呂では、桶全体がいわばバクテリア培養槽となっていて、彼らにとって好ましい環境が維持されるかぎり、永久的に分裂増殖を繰り返して微生物としての種の命が続いていきます。そしてそのバクテリアたちが自らの体内(細胞内)で酵素を合成しますから、寿命で死んだものからは細胞内の酵素が外部(桶の中)に漏れ出しますし、かれらの代謝物(排泄物)には酵素が混じっていますので、桶の中身は、未消化の脱脂ぬかとバクテリアと酵素で充満していることになります。
以上のような床材の違いと、それによる発酵メカニズムの違いは、以下に述べるような結果をもたらします。
1.酵素の量の違い: おがくず酵素風呂では、外部から酵素を加え、加えた酵素は時間の経過とともに消耗減少するのに対し、米ぬか酵素風呂では、そこで常時分裂増殖して莫大な量になった微生物が酵素を産生しているので、桶内部の酵素の量が圧倒的に多い。つまり、体表から吸収できる酵素の量も多いと想像されます。
2.発酵の度合いの違い: 酵素の量が多いため、桶内部の熱の上がり方が違います。
より高い温度まで発酵熱が上昇し、その温度が長時間維持されます。
3.栄養素の違い: 米ぬか酵素風呂では、酵素だけでなく、米ぬかに含まれるそれ以外の有用成分も摂取することができる。
4.清潔さの違い: 米ぬか酵素風呂では浄化槽の原理と同様に、桶の中の微生物が人体からはがれ落ちる垢、角質、体毛などを分解処理しますから、米ぬか酵素風呂の桶の中は常に清浄に維持されます。また、人体に無害な好気性有用菌が支配的になっていて、他の有害嫌気性菌の繁殖は抑制されますので、たとえ何らかの有害菌が混入したとしても、増殖繁茂することができません。これに対し、おがくず酵素風呂では、微生物がほとんど存在しませんから、混入した異物は処理されず、次第に汚れてきますし、その異物を餌として嫌気性菌がはびこる可能性もありますから、床材は定期的に交換する必要があります。(このブログの論文カテゴリーにある「2種類の生物」を参照ください)
5.メンテナンスの違い: 酵素を加えて攪拌するだけのおがくず酵素風呂と違い、米ぬか酵素風呂ではバクテリア(微生物)を培養していますから、かれらが元気で生活できるような環境の保全に神経を使わねばなりません。ですのでメンテンスはむしろ困難になり、ある程度の熟練が必要になります。
米ぬか酵素風呂では酵素を加える必要も、床材を交換する必要もありませんが、微生物を養うために、餌(米ぬか=タンパク質)と水と空気(酸素)を常に十分与えなければなりません。中でも、我々人間をはじめあらゆる好気性の生物にとって、もっとも大切なエネルギー源は酸素です。私たちは断食して何日も食べなくても生きていられます。体内に脂肪を蓄えていますから、いざという時は(野生動物の場合は何日も餌にありつけないことがよくあります)その脂肪を使うことができます。それより重要なのが水で、水がないと、そう長くはいきられません。そして、最も大切なのは空気です。ご存知のとおり、酸素が少し不足しただけで脳が働かなくなり、その結果全身が麻痺してすぐに死に至ります。この点は私たちのご先祖様である好気性のバクテリアも全く同様で、餌の米ぬかと水が十分でも、酸素が少し不足しただけですぐダウンしてしまいますから、注意が肝心です。酸素が欠乏すると、好気性菌は勢力が縮小すると同時に嫌気性菌が勢力範囲を拡大しますので、発酵の代わりに腐敗が起こるようになり、にがいような酸っぱいような独特の腐敗臭が発生するようになり、当然ながら発酵熱も発生しなくなり、酵素風呂として使えなくなるのです。
酸素が欠乏する原因はいくつかありますが、中でも重要と言えるのが、水分量です。
水分が多過ぎると、固まりやすく、空気が混ざりにくくなります。水分が多いと、体感温度は上昇しますので、床材の温度を上げたい時はどうしても水を多めにする傾向になりがちですが、混入空気は減少しますから、熱の維持は実際には困難になります。ただし逆に水不足になり、床材が乾燥し過ぎると微生物の活性は下がりますから、熱も下がります。
このあたりのバランスはかなり微妙ですから、日常的に餌の脱脂ぬかの量、天候、気温、湿度、換気の具合などを考慮しながら加える水の量を微調整しなければなりません。これらのバランスが適切で、発酵がうまく行っているときは、香ばしいよい香りがしますし、ぬかはさらさらでふわっとしており、固まりにくく、粒もできません。どちらかというと乾いた状態の方が、体感温度としては低めになり、びりびりとした刺すような熱さは感じにくく、逆にリラックスしてしっかり温まることができますし、何人入っても暖かさが持続します。この辺りの匙加減については、関与する変動ファクターが多く、一律にデータで示すことはほとんど不可能で、メンテナンス担当者の経験と、色、匂い、手ですくった時の感触などの微妙な違いをキャッチできる感性がもっとも重要になります。単細胞である微生物自体は肉眼では観察できませんが、犬や猫などと同様、生き物ですから、何よりも愛情をもって接することが肝要というわけです。
米ぬか酵素グループHP↓
http://www.komenukakoso.jp