マーカーの値はその後急速に下降してひと月経たないうちに0.9まで落ちました。それ以降、検査は月に1回になりましたが、結果はずうっと0.9−1.2の間で極めてわずかな変動の範囲に留まっていて、3年後に検査をやめるまでその状態はまったく変化しませんでした。血液検査ではマーカーだけを調べていたわけではなく、健診でいつもおなじみの項目である総コレステロールだの中性脂肪だの尿酸だのの数値も観察していたわけですが、酵素風呂通いを始めてから半年くらいでそれらのすべての数値が正常化したのです。特に総コレステロールなどは、最初290を超えていたのですが、225前後まで下がってしまったのには驚いたものです。
一方、CTの方では、一回は8cmに巨大化していたものが、その一月後の画像ではもとの3cmに戻っていて周囲に散在していた細かいのはすべて消えていたのです。その後も1年くらいは2か月に一回のペースでCTを撮っていました。あまり目立った変化はなかったのですが、その3cmの丸い影は、少しづつ縮小しながら、だんだんと肝臓左葉の内側から縁の方へ移動していくというか、まるで押し出されて行くかのように見えました。先生は、多分癌組織はもうとっくに死滅していて石灰化しているんだろうね・・と言われました。「先生、組織が死んでいるかどうかを確認する方法はないもんでしょうかね?」 「そりゃあ、切って取りだせば簡単に確認できるよ。」と先生。確認したいという欲求はかなりあったのですが、その確認のプロセスはあまり楽しそうではなかったので、それはお願いしないことにしました。
この主治医の先生は、地元の市立総合病院で外科部長を務めてこられ、今から20年前にそこを退職され、消化器外科を専門とする大きなクリニックを開業されたベテラン外科医で患者に優しい医療をモットーに活躍されている方です。その先生いわく、「今まで二百何十例もあなたと同じ病態の患者さんを診てきたけど、治療らしい治療を何もせずにこんな短期間に治ってしまうことなど一度もなかった。これは本当に奇跡としか言いようがない。」 米ぬか酵素風呂の件は先生にお話ししてあったのですが、そんなものを医師が治療とはみなすはずもないので当然ながらそのようなコメントになるのでしょう。ただし、温熱療法の可能性は認識されていたようで、そのクリニックにもその装置は設備されていましたが、残念ながらついにそれを試すチャンスはありませんでした。
手術後3年ほどは間隔は伸びたものの定期的に血液検査とCTは続けていましたが、結果はまるで変化がありませんでした。ただ一つだけ変化したのは、CTの機械でした。旧型は一枚撮影するたびにガクンと少し前進してその都度息をいっぱい吸い込んで止めるという儀式が必要で、全部終わるのに30分くらいかかったのが、ヘリカルCTと呼ばれる新型ではまるで螺旋階段を駆け上るがごとく一続きで撮ってしまうのでほんの十数秒で済んでしまう。 この20年くらいの間の検査機械の進歩は本当に目覚ましいものがあります。一昔前までは最先端で非常に高価だったMRIだのPETだのといった検査装置も最近ではあちらこちらに導入され頻繁かつあたりまえに使われています。これはこれで結構な話ではありますが、よく考えてみると、疑問も残ります。
vol.10 に続く。
一方、CTの方では、一回は8cmに巨大化していたものが、その一月後の画像ではもとの3cmに戻っていて周囲に散在していた細かいのはすべて消えていたのです。その後も1年くらいは2か月に一回のペースでCTを撮っていました。あまり目立った変化はなかったのですが、その3cmの丸い影は、少しづつ縮小しながら、だんだんと肝臓左葉の内側から縁の方へ移動していくというか、まるで押し出されて行くかのように見えました。先生は、多分癌組織はもうとっくに死滅していて石灰化しているんだろうね・・と言われました。「先生、組織が死んでいるかどうかを確認する方法はないもんでしょうかね?」 「そりゃあ、切って取りだせば簡単に確認できるよ。」と先生。確認したいという欲求はかなりあったのですが、その確認のプロセスはあまり楽しそうではなかったので、それはお願いしないことにしました。
この主治医の先生は、地元の市立総合病院で外科部長を務めてこられ、今から20年前にそこを退職され、消化器外科を専門とする大きなクリニックを開業されたベテラン外科医で患者に優しい医療をモットーに活躍されている方です。その先生いわく、「今まで二百何十例もあなたと同じ病態の患者さんを診てきたけど、治療らしい治療を何もせずにこんな短期間に治ってしまうことなど一度もなかった。これは本当に奇跡としか言いようがない。」 米ぬか酵素風呂の件は先生にお話ししてあったのですが、そんなものを医師が治療とはみなすはずもないので当然ながらそのようなコメントになるのでしょう。ただし、温熱療法の可能性は認識されていたようで、そのクリニックにもその装置は設備されていましたが、残念ながらついにそれを試すチャンスはありませんでした。
手術後3年ほどは間隔は伸びたものの定期的に血液検査とCTは続けていましたが、結果はまるで変化がありませんでした。ただ一つだけ変化したのは、CTの機械でした。旧型は一枚撮影するたびにガクンと少し前進してその都度息をいっぱい吸い込んで止めるという儀式が必要で、全部終わるのに30分くらいかかったのが、ヘリカルCTと呼ばれる新型ではまるで螺旋階段を駆け上るがごとく一続きで撮ってしまうのでほんの十数秒で済んでしまう。 この20年くらいの間の検査機械の進歩は本当に目覚ましいものがあります。一昔前までは最先端で非常に高価だったMRIだのPETだのといった検査装置も最近ではあちらこちらに導入され頻繁かつあたりまえに使われています。これはこれで結構な話ではありますが、よく考えてみると、疑問も残ります。
vol.10 に続く。