厚生労働省の統計によれば日本全国で毎年100万人を少し超えるくらいの人が亡くなっています。  おおまかな内訳は、その3分の1が癌、そして3分の1が心臓病と脳卒中に代表される血管障害、残り3分の1が、肺炎、不慮の事故、自殺、老衰、その他・・・といった具合です。  つまり、国民の3人に一人は癌で死亡し、3人に一人は心臓病か脳卒中で亡くなっていることになります。

保険適用の医療に費やされる支出の総計である国民医療費は35兆円にのぼり、その内少なくとも15兆円は癌医療の関係となっていて他の分野に比べて突出しています。
毎年これだけの莫大な出費をしても、その大部分を占める癌をはじめとする慢性病の患者と死亡者は増え続ける一方で、その結果病院はいずこも満杯で医師不足、看護師不足が深刻化しているのが現状です。   その原因を高齢者人口の増加、ライフスタイルの変化や環境の悪化による罹患率の増大に帰するのは容易でありましょうが、私はむしろその最大の要因は予防医学の軽視と、薬物による対症療法にのみ頼っている現代西洋医学の限界にあるとみています。  現代西洋医学は国から認められた唯一の正統的医学として優遇され公的健康保険が適用されていますが、慢性病に限ってはその西洋医学が本当に唯一最良の医学であるのか甚だ疑問です。  

確かに18世紀中頃から西欧で発展してきた西洋医学は、ペストやコレラといった伝染病対策、あるいは、戦場の負傷兵救護に端を発した救急救命医療の分野において目覚ましい威力を発揮してきたのですが、時代の推移とともに対処すべき問題の中身が変化してきて、統計が示しているように現在我が国では感染症はむしろ稀であって、癌、血管障害をはじめとする慢性疾患が主流になり来院患者のおよそ9割を占めるようになっていて医療費の大部分がそこで消費されています。   このような慢性疾患については明確な原因究明もなされておらず、予防教育も徹底されていません。  また、その治療についても対症療法しかありませんから、アトピーひとつ根治することができないばかりか、薬物の濫用による数々の弊害は問題を一層困難かつ複雑にして結果的には人々に苦痛をもたらすばかりか医療費を増大させ税負担を重くし、国民生活を圧迫する一つの要因にもなっています。  この大問題を一歩でも解決に近づけるためには国民一人一人の大胆な認識の転換が必要でありましょう。