前項で自律神経の失調を引き起こす根本原因がストレスであると言いました。
そこで、ストレスについて少し詳しく観てみたいと思います。
普段ストレスと呼んでいるものは本来はストレッサー(stressor)であり、ストレス(stress)を与える有害因子のことです。  ストレスには心理的なものと物理的なものとがあります。  そしてストレスには一時的なものと継続的なものがあります。  一時的なストレスは限定的であって、それが消えればその影響も消えて一旦は撹乱された自律神経もすぐに元の状態に戻りますからその影響は限定的です。   問題はむしろ、継続的ストレスにあります。  
たとえ、それが比較的軽微なものであっても、長期間継続することによって自律神経の失調が慢性化し、その結果免疫不全が固定化します。  一時的ストレスの例としては、突然の驚き、恐怖などがあり、一方、継続的ストレスは心理的には、悲哀、心配、不安、不満、絶望、嫌悪、憎悪、怒り、ねたみなどのマイナスの感情を長期間抱き続けたり、そして、物理的には、過酷な労働環境、騒音の持続、継続する苦痛、極端な暑さ寒さ、異なる文化圏への赴任、引越や移住、災害避難などによる生活の変化といった環境的要因が多いのです。   物理的ストレスにはそれ以外にも、直接皮膚や粘膜やDNAを傷害するような毒物、アルコール、タバコの煙、農薬、殺虫剤、塩素、紫外線、ウイルス、放射線、電磁波、有害化学物質などが近代化と並行して身の回りに無数に存在するようになり、免疫不全と相まって発癌の要因ともなっています。   ここで重要なことは、このような物理的ストレスが単独で発癌の原因になるというのはむしろ稀なケースであろうということです。   と言いますのは、私たちが本来持っている自己治癒、自己修復システムは非常に強力であって、ある程度の物理的ダメージにも余裕を持って耐えられるような仕組みになっているからです。
問題は、継続的心理的ストレスによって慢性的自律神経失調、つまり、免疫機能不全に陥っている状態にそのような物理的ストレスが加わった場合です。
この場合は自己修復が不完全になりますから、その病態が様々な症状を生み出すことになり、病気と診断されます。  このケースの具体例としては、病気で夫が急死して、喪失感と悲しみで自律神経失調になり、免疫不全となり風邪をこじらせ、続いてリウマチを発症するというのがあります。  免疫不全ですので、感染症にかかりやすく、なかなか治りません。  それでも、菌に対して攻撃的免疫が活性化します。  機能不全により、行き過ぎの免疫を抑制する役目を持ったサプレッサーT細胞が機能せず、攻撃的免疫にブレーキがかからないので暴走を起こし、相手構わず自分の組織まで攻撃してしまうようになり、自己免疫疾患のリウマチという症状を発症することになります。

その人にとって、何がストレスになり、そのストレスをどの程度感じるかというのには個人差がありそうです。 これは人によって異なるストレス感受性であって、それは遺伝的要因と幼児期の環境により形成された性格に大きく影響を受けるに違いありません。