白血球
38億年の生命進化の過程で、核を持たない単純な細菌(原核細胞)が合体し役割分担しながらより複雑で核をもつ細胞(真核細胞)に進化し単細胞の微生物になり、単細胞生物同士が合体し役割分担しながら、さらに高度で複雑化したシステムとしての多細胞生物になり、さらなる進化を遂げて私たちが日頃目にする動植物そして人間になりました。 細胞は、表皮、筋肉、骨、神経、血管など多種多様な組織、そして各臓器を構成し、それぞれの機能が分化し組織の一員として役割が固定されましたが、そうなると個々の細胞は行動の自由を失います。 侵略者や反乱軍は体のどこで攻撃してくるか予測できませんから、それらに対処するためには、いずれの組織にも所属せずに普段から全身くまなくパトロールしていて敵を発見次第攻撃できる遊走能力のあるフリーな細胞を残しておく必要があったのです。 白血球は有事の際、骨髄で増産され血流に乗って現場に急行できる体制になっています。

白血球はその内容を詳しく分析すると役割が異なるいくつかの種類で成り立っているのがわかります。 大きくは、顆粒球とリンパ球そしてマクロファージの3種に分類されます。 通常その比率は概ね顆粒球が65%、リンパ球が30%、マクロファージが5%くらいです。 顆粒球は好中球、好酸球、好塩基球によって構成されていてそれぞれに役割分担がありますが95%以上は好中球です。 

顆粒球の主要任務は外敵に対する防衛です。 つまり国防軍です。 外敵とは具体的には危害をもたらしうる他の生命体や環境、さらには今後脅威に発展しうる事情(これは、大脳皮質の発達した人間において顕著にみられますが、過去の経験や知識から未来を予測する能力によります)などです。 それに対しリンパ球の主要任務は、治安を乱す暴徒や反乱軍の鎮圧、あるいは問題を引き起こす可能性のある外国人やスパイの追放などといった、いわば警察や治安部隊のような役目で、具体的には、癌細胞、異種蛋白、そしてウイルスといったもう少し厄介な敵達です。 マクロファージは偵察と廃棄物処理が任務で、敵を発見次第リンパ球に通報したり、敵の死骸や残骸、そしてあらゆる不要物を食べて酵素で分解処理します。 処理済の不要物質、有害物質は尿や汗とともに体外に排出されますが、酵素で分解処理できない物質や、人工的化学物質のようにそれを分解できる酵素をもともと持ち合わせていない場合は、そのまま体内に残留します。 

したがって何らかの原因によって血球を生み出す骨髄機能が破壊されたり抑制されると白血球が減少して内外の敵に対しての防御が弱まります。 体が傷害されたり外敵が侵入すると、それに対抗する顆粒球が増産されて極端な場合その比率が80%を超えたりしますが、そもそも白血球自体が減少していますので、比率は上がっても絶対数は減少します。 そのため侵入した菌との戦いに勝てず、肺炎などの感染症を引き起こして死亡します。 また、この場合、顆粒球とは逆に当面増産の必要の無いリンパ球の比率は極端な場合20%以下に下がったりします。 白血球全体が減少し、その上比率も下がりますから、リンパ球の絶対数は普段の三分の一とか四分の一とかに減ってしまうのです。 こうなると、血液1マイクロリットル(1立方ミリメートル)あたりのリンパ球は数百個しかなく、対する癌細胞は1マイクロリットルあたり100万個ですから、これではとても絶対数ではるかに上まわる癌組織に勝てるはずがありません。 

また、交感神経の緊張によって増えすぎて余った顆粒球は2−3日すると粘膜の上で寿命を終えますが、その時に、敵と戦う武器として持っていた活性酸素をどうしても放出してしまいます。 この活性酸素は強力な酸化剤ですから、粘膜を傷害して炎症を起こし、極端な場合は潰瘍の原因になったりします。 そして、破損した組織の修復のために細胞分裂の頻度が高まり、よって発がんのリスクも高まるというわけです。

また、自律神経はホルモンとも相関関係をもっています。 特に、体全体の代謝をコントロールしている甲状腺ホルモンと臨戦態勢を促進する副腎髄質ホルモンのアドレナリンと交感神経末端から放出されるノルアドレナリンなどがその代表です。 何らかの原因で自律神経が乱れると、ホルモンのバランスが乱れて、その乱れがさらに自律神経を失調させるといった悪循環を引き起こすのです。 たとえば、恒常的ストレスによって交感神経が優位になり過ぎると、甲状腺ホルモンの分泌が過剰あるいは不足になり、心拍数が増えて代謝が過度な状態になったり、またはその逆になったりします。  そうすると様々な不快な症状が発生し、それがさらに交感神経を刺激することになりますから、甲状腺ホルモンの分泌異常は調整されないまま、ますます事態は悪化して慢性化することになります。 

大脳で意識される精神的ストレス(悩み、心配、不安、恐怖、ねたみ、悲しみ、嫌悪といったマイナスの感情)や物理的ストレス(怪我、苦痛、疲労、)の情報は自律神経を経由して分泌腺に伝えられ、内分泌腺でのホルモン分泌を促進したり、外分泌腺での消化液の分泌を抑制したりします。 同時に交感神経の緊張は顆粒球増加とリンパ球減少をまねき、免疫力が低下して発がんの危険性が高まると同時に、免疫バランスの乱れを招きあらゆる種類の自己免疫疾患を引き起こすことになるのです。 さらに、交感神経の緊張によって血管が収縮しますから、血流が抑制され、体温が低下したり、血圧が上昇します。  体温の低下は酵素の活性を奪い代謝を低下させ、白血球の活動も低下しますから免疫低下をまねき、感染症、癌、内臓機能不全の原因となりますし、血圧と血糖の上昇は動脈硬化を促進するなど脳卒中と心臓病のリスクを高めることになります。

Part3につづく