Vol.10から少し脱線が始まりましたが、脱線ついでに現在の我が国における癌医療さらには医療全般に関する私見を述べたいと思います。

言うまでもなく我が国では科学的根拠に基づいた現代西洋医学だけが正統的医学とみなされ、それ以外の療法などは民間療法とか代替医療などと呼ばれ、インチキ呼ばわりされる場合が少なくないのですが、よくよく観察すると、正統とされる現代西洋医学が本当に正しい理想的な医療であろうかどうか甚だ疑わしくなってくるのです。
このことは、生活習慣病やアレルギー性疾患などの慢性的疾病に対する治療方法において顕著と言えます。 例えば、皮膚科ではアトピー性皮膚炎の治療には必ずステロイド軟膏を使用します。実際効果てきめんで、すぐに炎症が治まり、患者さんはかゆみの苦痛から救われます。ところが、しばらく経つと薬の効果は薄れ、炎症は再発します。すると再び薬が必要になる。以後この繰り返しとなり、薬と縁が切れなくなる。塗布を繰り返していると、ステロイドは皮膚に侵潤し、酸化コレステロールに変化し、皮下に沈着します。酸化コレステロールは異物として排除の対象になりますから、さらなるアレルギー反応を引き起こします。したがって、症状はさらに悪化し、時間の経過とともに皮膚は劣化変色し、がさがさになります。女性の場合顔全体がこうなったら悲劇です。問題は皮膚だけではなく、たとえわずかな量であっても体内に吸収され蓄積されたステロイドは全身的に様々な障害を引き起こします。つまり、いくら皮膚科に通っても完治できないばかりか、却って大きく広範な問題を生じさせることになります。

癌医療の場合は、人の生死に直接的に関わってくるだけに事は一層重大です。現在正統医学における癌治療は、手術、化学療法(抗がん剤などによる薬物療法)、放射線療法のいわゆる三大療法が中心ですが、そのどれもが完治、つまり、本来の健康体を取り戻すには程遠い治療であると言えます。と言いますのは、そのどれもが免疫力と自然治癒力を阻害するからです。手術は大切な臓器を切除したり、神経を切断したりするので後遺症が残る場合が多いし、一時的にせよ全身麻酔は神経を麻痺させるので免疫力を低下させます。抗がん剤は血液を汚し、解毒のため肝臓に大きな負担をかけ、健康な組織も同時に障害し、結果免疫力を著しく低下させます。放射線は正常な組織も障害し交感神経を極度に緊張させ、そのためリンパ球が激減して免疫力の低下を招きます。また、再生不能な障害を残す危険もあります。そのために病気そのものはより複雑化し難治化し、あるいは死期を早めたりする場合が多いのです。真に体の不具合を治してくれるのは地球上に生命が誕生して以来38億年もの歴史のある自然治癒力以外にはありえませんから、それを最大限に発揮させる環境を整えることこそが本来行なわれなければならない治療であるはずです。

Vol.12に続く